中野梓生誕までのエピソード
けいおん!作者のかきふらい氏は連載一周年の節目に新キャラの登場を検討していたが、同時に広げすぎたストーリーの風呂敷をたたむのに苦心していた 所を、アシスタントが見かねて山梨への取材旅行を提案する所から話は始まる。かきふらい氏の中での新キャラの構想はまだ10段階でいえば3くらいであった が、そのときに決まっていたのはP-MODELのメンバー「中野テルヲ」から苗字をとって新キャラの苗字にするということくらいであった。取材旅行の方はゆっくり甲斐路の景色を愉しみながら、というかきふらい氏の意向に沿った為往路は普通列車を乗り継いで甲府(途中勝沼ぶどう郷で下車)へ向かった。宿泊先の甲府でも相変わらず執筆作業には追われていたが、静かな環境での編集作業は思いの外捗ったようだ。しかし、構想が一気に固まるのはこの時ではなく翌日の復路で「中野あずさ号」へ乗車した時だった。
翌日の土曜日、甲府駅で新宿駅国道20号線跨 線橋工事の為の運休あれこれを知らなかったかきふらい氏とアシスタントは替わりに「中野あずさ号」への乗車を駅員に勧められる。この時、かきふらい氏の中 で一つのインスピレーションがあった。前に決めていたサンプラザ中野云々が頭を過ぎり、「そうだ!あずさだ!中野梓だ!」と甲府駅ホームのモニュメント 「時の鐘」の前で思わず叫んだという。名前が決まったあとの問題はキャラクター設定や作画である。
車窓に広がる甲府盆地を離れてしばらく経った後、途中の大月駅で野良猫が乗り込むアクシデントが発生する。列車は1分弱の遅れを伴って発車した。しばらくその猫は女性の乗務員の手に抱えられていたが、いきなり逃げ出してかきふらい氏の足元に寄ってきた。その時だった。「ネコミミ」そしてあだ名の「あずにゃん」と次々とアイデアが浮かび、思わずかきふらい氏は猫を持ち上げて万歳をしてしまったのだ。同時に向かいの席に座っていた女子大生らしき娘が驚いて『みなみけ』の文庫本を落としてしまった。イメージはその時たまたま開いていたページにいた南夏奈をモデルにしたという。ちなみに猫は次の停車駅である八王子駅で降ろされて大月に戻されたと後日談で語られた。
取材旅行も終わって帰ってきたかきふらい氏一行を待っていたのは不機嫌な担当であった。ご機嫌なかきふらい氏が「どうしたの~?」と言いながら原稿を渡すなり当時の担当が「こんなんじゃダメですーっ!!!やる気が感じられないです!」 と激怒。というのも、ストーリーをまとめた編集が出来たというのを除けば、結局のところ取材旅行の目立った収穫が新キャラ「中野梓」の存在のみだった為で あった。しかし、土産の信玄餅と勝沼ワインを渡した途端に骨抜きになってしまった。ちなみに中野梓の入部当初のストーリーはこの時のエピソードが元になっ ているが、それは御自身の目で確かめられたし。
このようにして特急列車のなかで生まれた新キャラ「中野梓」は新入りでありながらも後にアニヲタのみならず多くのファンを掴むことになる。
